みなさんこんにちは!
今回も紙業界ならではのマニアックな内容をお届けいたします。
紙に興味がある方も、たまたまこのサイトを覗いている方もぜひ最後までご覧ください。
今回ご紹介する内容は「合紙」です。
合紙を「あいし」と読む場合は、印刷や製本時に印刷用紙の間に挟む紙のことを指しますが、今回の内容は「ごうし」です。「ごうし」とは、紙と紙を貼り合わせて1枚の紙に仕上げることをいいます。実は私たちの身の周りには合紙された紙を使用した商品が多く存在しています。
意外と知らない合紙の世界、少し足を踏み入れてみませんか?
--------------------------------------------------------
合紙が必要になる理由
--------------------------------------------------------
現在世の中には数千種類の紙が存在しています。ですが、それでも「これっ!」といった希望通りのど真ん中の紙が見当たらないこともありますし、また、そもそも存在しないといったことも多々あります。
「では」と言ってオリジナル用紙を抄造しようとすると、どうしても一定数量以上の生産ロットが必要となってしまいます。
「通常の規格品の紙ではダメ……。でもオリジナル用紙を抄造するほどの量でもない……」、そんなときの解決策の1つが合紙なのです。
(※オリジナル用紙抄造についての参考記事『密着!製紙工場でのオリジナル用紙抄造の1日!』をご覧ください)
------------------------------------------------------------------
合紙工程を経て作られるもの
------------------------------------------------------------------
合紙は紙と紙を貼り合わせて1枚の紙に仕上げたものなので、表と裏で色が違う紙が必要であったり、通常の規格品では存在しない厚い紙が必要な場合に合紙の方法を取ることが多くなります。
そして、その合紙を取り入れた商品の1つにシオザワで開発・生産しているオリジナルスケッチブックがあります。
こちらはそのスケッチブックの写真ですがそれぞれ表表紙、裏表紙部分に合紙加工を施した紙を使用しています。
表表紙は「サイタンブラック」と「白板紙」を貼り合わせています。
このケースでは、表が黒色のエンボスで、それに加えて裏が白色で、表紙にふさわしい厚さを有している紙が必要でした。このような事案には合紙が非常に有効となります。
裏表紙も同様に「オパール」と「白板紙」の貼り合わせ品を使用しています。
紙業界に長くいると、物を見た瞬間に「あ、合紙品だな…」とすぐにピンときます。
加えて、加工品に関する知識があれば、お客様からの紙のお問い合わせに困ることはありません。
(※当社オリジナルスケッチブックの参考記事『すでに出会っていたかも!?「ALETSスケッチブック」』をご覧ください)
---------------------------------------------------
合紙ってどうやるの?
---------------------------------------------------
さて、合紙品を実際に使用している一例としてスケッチブックをご紹介しましたが、では合紙という作業自体は一体どのように行われているのでしょうか?
実は自分たちの手で紙を1枚ずつ糊付け作業を行って……、なんてことはありません(笑)
ちゃんと合紙の専門業者さんが存在し、日々職人さんが熟練の技で合紙作業を行っているのです。
今回はなんと特別に、日頃お付き合いのある合紙業者さんのご厚意で、実際の合紙作業を動画撮影させていただきました!
なかなか実際の作業を見ることはないと思います。
貴重な合紙作業の様子、ぜひご覧ください!
いかがでしたでしょうか?
動画だけで見るとよくわからない部分もあったかと思いますので、順を追って流れをご説明します。
まず合紙機の給紙口から、貼り合わせする片方の紙が1枚ずつ送り出されます。こちら側から流れてくる紙は、貼り合わせる際に土台となる側(厚い方の紙)になることがほとんどです。2枚重ねて送り出されることがないよう、稼働前の機械設定時に紙厚ごとに毎回機械調整を行う必要があります。
送り出された紙は、その後糊付けされます。白い液体が溜まったローラーを紙が通るシーンがありますが、あの白い液体が糊です。糊は多すぎても少なすぎてもダメで、その具合によって製品の良し悪しが決まります。貼り合わせる紙の特性を考慮して、職人さんの手で都度調整されているのです。貼り合わせ作業の前から職人技が発揮されているのです。
糊付けされた台紙は貼り合わせ工程へと送り出されます。台紙は貼り合わせ台へと送られ、職人さんがもう片方の紙を重ねて貼り合わせます。
動画を見る限りでは自分でも出来そうって思いませんか? でもこの何気ない作業にも驚きの技術がたくさん詰まっているのです。
まず貼り合わせのスピードですが、台紙が送られてから貼り合わせまで約2秒から3秒……、次々と送り出される台紙に対して確実に貼り合わせ作業を行っています。台紙が送り出されるスピードに対して貼り合わせ作業が間に合わないと、糊の付いた台紙同士が重なってしまい、その時点で不良品が発生することになります。
そしてスピードだけでなく正確さも要求されます。
紙と紙を貼り合わせる際に、実は紙の角を合わせて貼っています。動画を見てお気づきになった方はいらっしゃいますでしょうか?
角を正確に合わせることで斜めになることを防ぎ、しっかりと全面が合紙されます。そして更にシワが入らないよう、手元部分から貼り合わせるという技術も必要とされるのです。スピードと正確性が常に求められるまさに職人技ですね!
糊で貼り合わされた紙は、その後、圧胴でプレスされて紙同士を密着させます。これで1枚の合紙工程が完了します。この圧胴も紙厚や素材によって圧の強さは毎回調整されており、紙の傷やシワの発生を防いでいるのです。
以上、簡単ですが動画の内容の説明でした。
どうです? 説明を聞いてみると、もう1回動画を見直してみたくなりませんか?? せっかくの特別な動画ですので、ぜひ何回でもご覧ください。(笑)
---------------------------------------------------------------------
合紙って実はとても身近な存在
---------------------------------------------------------------------
今回ご紹介したスケッチブックの他にも、合紙製品は身の周りにたくさん存在します。お菓子の箱や本のケース、写真台紙など挙げればキリがないくらいです。その1つ1つに職人さんの技が施されているのです。
ぜひ紙製品をお手に取られた際は「これ合紙品かな??」と紙に注目してみてください。
今まで持ち合わせていなかったマニアックな視点って意外と楽しいものですよ!(笑)
「こんな合紙品を作りたい」といったご相談もお待ちしております。どうぞお気軽にシオザワまでお問い合わせください。
ということで、今回はこの辺りで……。
これからまた新たなマニアックネタを探しに行ってきます!
次回の更新もお楽しみに!