書籍用紙のトレンドを探る『知ってる? あの本の紙』シリーズ。今回はその第7弾。
第6弾に続き、2019年7月に発表された直木賞に関連する書籍に採用された用紙について語っていきたいと思います。
前回は第161回直木賞を受賞された大島真寿美さんの『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の見返しに採用された「しこくてんれい つき」について紹介いたしましたが、今回はノミネートされた5作品について書かせていただきます。
(本の内容に関する感想やネタバレは全くありませんので、ご安心ください)
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朝倉かすみさん『平場の月』
見返し 「い織り 桜」
窪美澄さん『トリニティ』
見返し 「アラベール アッシュグレー」
澤田瞳さん『落花』
見返し 「里紙 ききょう」
原田マハさん『美しき愚かものたちのタブロー』
見返し 「アラベール オータムリーヴ」
柚木麻子さん『マジカルグランマ』
見返し 「羊皮紙 水」
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朝倉かすみさんの『平場の月』の見返しに採用された「い織り」は書籍の中でも人気のある用紙ですね。
以前紹介させて頂いた宮部みゆきさんの『この世の春』のカバーにも採用されていた和風なエンボスの用紙です。
窪美澄さんの『トリニティ』と、原田マハさんの『美しき愚かものたちのタブロー』の見返しに採用された用紙は「アラベール」。
「アラベール」の白系の4色(ウルトラホワイト、スノーホワイト、ホワイト、ナチュラル)は比較的よく耳にする銘柄なのですが、今回2作品に採用された色はアッシュグレーとオータムリーヴ。
なかなか渋いところから用紙をえらばれたなと思いました。色物は5色ありますが、どれもおしゃれな名前すぎて覚えられないですね(個人的な感想です)。
澤田瞳さんの『落花』の見返しには「里紙 ききょう」が採用されました。
「里紙」は色紙をベースに白い繊維を散りばめた様な用紙で、手触り感もあり、色もみな落ち着いた雰囲気の大人な用紙です。今回採用された色(ききょう)も大人の女性を思わせる”品の良い”うす紫色をしています。
最後に柚木麻子さんの『マジカルグランマ』。見返しには「羊皮紙 水」が採用されました。
羊皮紙は本来、おもにヨーロッパで普及したシートで、羊や動物の皮を「洗って洗ってとにかく洗って作られたもの」と聞いております。現在の紙が誕生するまでは、エジプトでは草を叩いて作ったパピルスを、ヨーロッパでは羊皮紙を使用していたのですね。
そんな羊皮紙の雰囲気に合わせて作られたのが今回採用された「羊皮紙」です。
原料はもちろんパルプ(木)ですが、厚みのある用紙(220kg)ですと皮のようなテクチャーを感じますよ。
では、今回はこのへんで……。
次回もお楽しみに!