2019年上半期直木賞受賞作品に使用している紙 その①

 

書籍用紙のトレンドを探る『知ってる? あの本の紙』シリーズ。今回はその第6弾。
少し時間がたってしまいましたが、2019年7月に発表された直木賞に関連する書籍に採用された用紙について語っていきたいと思います。

なお、本の内容に関する感想やネタバレは全くありませんので、ご安心ください。

第161回直木賞にノミネートされた6名が全員女性とは、161回目を迎える直木賞でこれまで一度もなく、史上初とのこと。その中で今回受賞されたのは大島真寿美さんの『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』でした。おめでとうございます!

それではさっそく受賞作品を手にとって紙調べ……、
と行きたいところですが、今回はノミネート作品がすべて女性ということで「用紙選びにもどこか女性らしさがあるのでは?」と勝手に予想し、それぞれの書籍を手にとってみました。

すると6作品中5作品で、カバーがラフグロス系の用紙が使用されていました。
ラフグロス系の用紙は手触り感があり、印刷面に光沢がでる人気の用紙です。
――なのですが、紙調べをする側からすると、どの用紙も似ているので銘柄まで特定するのはとても難しいのです。

と言うわけで、ちょっと違う切り口から見ていこうと……。

すると次に気になったのは、どの書籍も見返しに意外な用紙を採用している(あくまで紙屋目線)ところでした。
では各書籍の見返しを比べていきましょう。

 

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
直木賞受賞作品『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』 の見返し
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 

用紙: しこくてんれい つき

「和紙のような」洋紙の典型的な銘柄で、表面ににょろにょろっと模様の入った用紙。
このにょろにょろとしたものの正体はレーヨン。レーヨンが表面に抄かれていて光にあてると反射でテカテカと輝くのです。

 

もともと越前などの和紙では楮(こうぞ)を用いて柄にしており、テカテカ光りません。
抄き込む素材により雰囲気が変わるのですね。

このにょろにょろの事を『華(はな)』と呼ぶそうです(取引先の和紙会社の営業さん談)。名もなさそうな模様にもきれいな名前があるのですね。
会話の中でも「あのほら、にょろにょろしたやつ?が入った紙……」
なんて言わずに「華の入った用紙を……」とサラリと言いたいですね。

「しこくてんれい」の色は、元は「白」と「うす茶」の2色しかなかったのですが、数年前に「高白色の白」や「パステルカラー3色」、さらに「抹茶色」までラインナップが増えている用紙です。
普段は冠婚葬祭関係のはがきや挨拶状に使用されることも多い用紙ですが、「しこくてんれい」の色物が書籍に採用されたのを(私としては)初めて見たのでとても驚きました。

   


今回はしこくてんれいのお話でいっぱいになってしまったので、他の5作品は次の回で紹介します。
お楽しみに~。