2018年本屋大賞作品『かがみの孤城』及びノミネート作品の用紙

 

新年あけましておめでとうございます。
「2019」という年は、平成最後の年であり、同時に新元号の最初の年でもあります。
果たして今年はどんな年になるのでしょう?
大いなる期待と、若干の不安を持って、2019をスタートした私でした。

さて、そんな中、新年早々行った先といえば本屋さん。
そしてふと思い出しました。
「あれ? そういえば”紙らぼ”に2018年の本屋大賞受賞作品の紙の記事を載せてなかったなぁ……。やばっ」
 
というこで、遅ればせながら、
書籍用紙のトレンドを探る『知ってる? あの本の紙』シリーズ。今回はその第5弾。
2018年本屋大賞の作品にスポットを当てて記事を書いていきたいと思います。
 
特に、今回は「扉」に注目して印刷や用紙の使い方など表現について、気になったものを紹介したいと思います。
もし、お持ちの本がございましたら、扉にも注目してご覧ください。
もちろん、作品のネタバレになる内容や、感想には一切触れていませんのでご安心ください。
  

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『かがみの孤城』 辻村深月著
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扉: 純白ロール
 
最近のトレンドとして、表裏差がある用紙を扉に使用するケースが増えています。
本書で扉に使用された「純白ロール」は表がツルツル、裏はザラザラした風合いを持っています。(写真は北越コーポレーションの純白ロール「はまゆう」)
 
本来の印刷面はツルツルした面なのですが、あえてザラザラ面に印刷することで和紙の様な表現をするケースも増えてきています。
ちなみに『かがみの孤城』では、ザラザラ面を手前にし、ツルツル面に鏡文字で印刷し、透かして手前のザラザラ面から文字が読めるようにしてあります。(凝ってる~!)
扉の奥に”鏡の世界”があるような……。
紙1枚で素敵な表現をしています。

  

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『AX(アックス)』 伊坂幸太郎著
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カバー: ヴァンヌーボVG スノーホワイト<150>
扉:  ヴァンヌーボVG スノーホワイト<130>

カバーを見たときから、なんか見覚えのある景色。
それもそのはず、「紙らぼ」事務所から当社の有明の倉庫へ向かう途中によく見る景色でした。
豊洲市場あたりから晴海ふ頭方向に見える景色がカバーと扉に描かれています。

でも何か違和感が……。

よく見てみると、景色が反転していました。
本作品と『かがみの孤城』 、たまたま2作品とも、反転して印刷する手法が使われていました。
  

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『騙し絵の牙』 塩田武士著
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扉: 片アート
 
こちらも表裏差のある用紙。
アート紙はコート紙よりも塗工量が多く、印刷すると光沢の強い仕上がりになります。
また、片アートは表面のみ塗工しており、裏面は非塗工になっています。
扉には大泉洋さんがモデルとして載っており、「主人公を大泉洋さんだとイメージして読んで」と、一目でわかるインパクトの強い1ページに。
片アートを使用しているところが、写真らしさを表現できていると思います。

 

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『キラキラ共和国』 小川糸著
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扉: オパール 純白
 
すっきりした白地と、和紙のような手触り感と、透かした時の雲のような模様に、細いラインのやさしいイラストが映えています。
この扉の用紙は「オパール」という名前の割には和テイストな用紙なのです。
「オパール」には純白の他、あまり聞き慣れない淡根岸(うすねぎし)、砥粉(とのこ)、木蘭(もくらん)といった和色名を用いたパステルカラー系統の色も含めて11色がラインナップされています。
是非一度手に取ってみてください。
 

 

 

 

 


さてさて、書籍の賞は次々と続いていきます。
ということで、このシリーズもまだまだ続いていきます。
次回をお楽しみに~。