2017直木賞・本屋大賞W受賞『蜂蜜と遠雷』 "装丁のこだわり"徹底解剖! その①

先日、2018年本屋大賞が発表されました。
栄えある大賞は、『かがみの孤城』辻村深月著。

やっぱり!
と思った方も多いのではないでしょうか。(かく言う私もその一人)

ということで、今日は『かがみの孤城』について……、

と行きたいところなのですが、
どっこい、あえてそうはせず.
一年前の2017年大賞作品『蜂蜜と遠雷』恩田陸著、その装丁に着目して「徹底解剖!」と題して紙屋的にマニアな目線であれこれと皆様にお伝えしようと思います。
一年前の作品なのですが、どうしてもこの本のことには触れておきたくて……。

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『蜂蜜と遠雷』との出会い

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第156回直木賞&2017年本屋大賞 恩田陸著『蜂蜜と遠雷』。
すでにお読みになった方もいらしゃることと思います。
「まだ読んでな~い」という方、是非お読みになってみてください。
とにかく面白いです。その世界に引き込まれます。

ピアノコンクールを通しての人間模様が描かれた青春群像小説で、人物の心理描写が秀逸なのは勿論のこと、加えて音楽の描写が本当に素晴らしいです。
音楽を文章(テキスト)で表現した際に、その筆致の良さを「音が聞こえるようだ」と評したりします。
ではこの『蜂蜜と遠雷』はどうなのでしょう? 
はっきり申し上げます。「音が聞こえる」を超えて「音が見えるようだ」と。
そう評価するに値するセンテンスが全編を通して展開されているのです。
恩田さんの紡ぐ文章を目で追っていると、いつしか音が転がり始め、その鋭さや柔らかさが演奏会場に響きわたり、更にその音がオーディエンスを、会場全体を、どう揺さぶっているのか、その様(さま)が頭の中で再生されます。
ん~、これぞ読書の醍醐味!
文字量の多い小説ではありますが、読み始めたら止まりませんよ。

って、私は幻冬舎(出版社)の回し者ではありませんが……(笑)

さてと、まずは私と『蜂蜜と遠雷』の出会いからスタートしたいと思います。
それって必要?、と陰口が聞こえて来そうですが……冷汗

出会いは2016年10月。
よく行く書店の新刊コーナーで出会いました。
「おっ、恩田さんの新刊だ」
恩田さんの作品はこれまで、映画化された『夜のピクニック』などなどいくつか読んでいました。
「さて、今回はどんなんだろ?」と思って手にとってみると、まず感じたのが、ずしっと重い。
ぱらっと本を開けてみると、単行本ではあまりお目に掛かることのない上下二段組。それが500ページ以上続いている。
「おっ…」
この時、思いました。「恩田さん、勝負してきたな!」と。

恩田さんほどの作家さんの作品であれば、あえて二段組みにする必要もなく、通常の一段で少し余裕をもたせてページを構成し、上下二巻本として出版してもよかったはずです。いえ、一定量の販売が見込める作家さんの作品なのですから、あえて二段組みにして1冊に収めてしまうよりも、普通に作って上下二巻本として出版した方が、売上げとしては大きかったはずです。

なのに、
それがわかっていて、あえてそうはしなかった……。

何故か?
ひとつには、文字を詰めて二段組みにしてでも全編を1冊にまとめることで、価格的なお得感を出し、結果、読者にとって購入しやすいものにした。別な見方をすれば、それは、多くの人に手にしてもらいたい、読んで欲しい、という恩田さんと出版社の意図の表れ……。
ひとつには、1冊にしたことで”厚くて重い本”になり、気軽に持ち歩くことがしづらいものになってしまっているけれど、それは裏を返せば、「”ながら”読みをしないで、この本とちゃんと向き合って!」という恩田さんと出版社のメッセージがそこに込められているような気がする……。

と、そんなことを、この本を手にした時に勝手にピッと感じてしまったのでした。
まだ出版後まもなくの時期でしたので、世評も耳には入ってきてはいなかったのですが、何だかこの本から不思議なオーラを感じて、手に取った『蜂蜜と遠雷』をそのままレジにもっていった。これが私と『蜂蜜と遠雷』の出会いです。(ちょっと大袈裟ですね。。。汗)

さて、家に持ち帰り、いよいよ読書がスタート。

まずは装丁をながめ、「こってるね~」と感心。
読み始めると、とにかく面白い! ぐいぐいその世界に引き込まれる!
そして、読み進めて小説の世界に浸りながら、同時にこの本の装丁のこだわりにも改めて気づかされることになるのです。「いや~、参りました!」と。

ということで、この後、本題の「装丁のこだわり」に入ることなりますが、今日は一旦ここまでといたします。本題に入る前に、前段だけでこんなにも長くなってしまいましたので。。。すみません。
次回の「”装丁のこだわり”徹底解剖!」をご期待ください!
それではまた。