シオザワ「剣道ノート」 開発秘話

 

去る9月18日、シオザワ剣道部は全日本実業団剣道大会に出場しました。
大企業に所属する学生時代からのスター選手を相手に少数精鋭(?)で挑みましたが、3回戦敗退と苦汁を飲む結果となりました。
そんなシオザワ剣道部ですが、実は剣道部が企画・製作した商品が存在します。
その名は「シオザワ剣道ノート」。現在剣道雑誌のホームページ特設サイトや、一部剣道具店などで販売しており、これが実は知る人ぞ知る噂のノートなんです!
今回は、部活動から派生し商品開発・販売までに至ったこの「剣道ノート」の開発秘話をご紹介します。
  

■「剣道ノート」誕生のきっかけ

 2013年夏、シオザワ剣道部はとあるご縁でシンガポールへ剣道遠征を行い、現地の海外剣士の方々と剣を交え、交流を深める機会に恵まれました。ある日の稽古終了後、弊社代表の塩澤のもとへ1人の地元女性剣士がやってきました。
「塩澤先生、稽古ありがとうございました。こちらにサインを頂けないでしょうか?」
そう言って1冊のノートを開くと、そこには、彼女が稽古をつけて頂いた諸先生方のサインや自分の稽古の反省点などがビッシリと書き込まれていたのです。実はこの女性剣士、シンガポールナショナルチームの正選手という実力の持ち主。防具の胴の胸の部分には日の丸をデザインするなど、日本の伝統文化に魅入られ剣の道を志していたのです。これに驚いた塩澤は「IT化が進む世の中で、紙でなくてはならないもの。日本が世界に誇る伝統文化の価値を改めて感じた。」と後日話をしていました。

 その後2014年11月に、手好き和紙がユネスコ無形文化遺産に登録され「紙」に対して注目が集まったこと、そして2015年5月に世界剣道選手権大会が第一回大会以来45年ぶりに聖地・日本武道館で開催されるというタイミングが重なり、海外の方々にも魅力を感じてもらえる日本の良さを詰め込んだ剣道ノートを企画しようということになりました。
 シオザワ剣道部員は各員異なるセクションに所属していましたが、この剣道ノートの企画は、各部員の業務時間の合間でなんとかミーティングの時間を捻出し、セルフプロジェクトのような形で進みました。ノートと言ってもサイズや色、ページ数、製本形態など決めなくてはならないことが山ほどあります。喧々諤々と議論を重ね、企画のコンセプトである「日本の素晴らしさを詰め込む」という想いを中心に少しずつ仕様が決まり、仕上がりが見えていったのです。
   

■仕様の1つ1つに想いを込めて

 数ある決定事項の中で1番最初に決まったのが製本形態でした。穴を空けた本文用紙を糸で閉じる製本形態で、時代劇などの小道具で目にすることがあります。しかし和綴じ製本は、機械で行うことができず大量生産に不向きな上に、1冊1冊職人さんの手作業となるため、機械製本と比較するとコスト原価が高くなってしまいます。とは言え、製本は商品の顔。日本の伝統手法である和綴じ製本はビジュアルそのものが付加価値であるということから、多少コスト高になっても和綴じを採用することにしました。また、通常和本は縦書きのため右綴じ右開きですが、外国人の方も書き易いように罫線は印刷せず、あえて左綴じ左開きの仕様に決めました。世の中で左綴じ左開きの和綴じ本は、この剣道ノート以外には存在しないと思います(笑)
 次に決まったのが本文用紙です。理想としては和紙を使用したかったのですが、本物の和紙を採用すると1冊の価格が10,000円近くに…という恐ろしい試算がはじき出され断念。そこで和紙に近い風合い、ナチュラルな色味、ペン・筆ともに書き易さを備えた紙をターゲットに絞っていきました。我々は紙のプロですから、最適な紙を探すのはお家芸です。結果、掲げた条件の全てを兼ね備えた紙「モンテシオン」に決定! この紙は東日本大震災で甚大な被害を受けた日本製紙㈱石巻工場に於いて震災後最初に開発され「東日本大震災復興支援指定商品」と掲げられており、そういった意味でも採用をためらう理由はありませんでした。
 ページを構成する帳合は、裏面に筆痕が透けないよう袋とじ仕様にし、デザインは社内の書道有段者に「剣」の字を依頼、加えて剣道のシルエットをデータ化、その2つのデータを金型に起こし銀箔にて転写。色展開は藍と赤の2色と決め、サイズは巾着袋に収まるサイズを想定してA5とし、全ての仕様が決定しました。
 こうして「シオザワ剣道ノート」が誕生したのです。

   

◆第二弾の発売と今後の展開

 剣道ノートの上市後、剣道雑誌の取材や各種大会での販売で徐々に知名度が上がっていきました。有名選手のサインをもらおうと剣道ノートとサインペンを持った子供の姿を大会会場で見かけた時。その嬉しさは今も忘れられません。500冊用意した在庫は思うより早く底を尽き、第二弾の企画に取り掛かりました。第二弾は完全に国内向けに製作し、正しい右綴じの製本、縦書き用の罫線、表紙の文字の改新などのバージョンアップをし、また色展開を2色から7色へ大幅リニューアルしました。
 新しい商品を市場に投入すると本当に色々な声が聞こえてきます。好意的なものもあれば、もちろん批判的な声も聞こえてきます。その全てが第二弾企画のエネルギーになったことは間違いありません。「もっと良い物をお届けしたい!」という思いは自然発生的に湧き上がり、第一弾の発売から1年も経たずに第二弾を発売しました。
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そして今。また違った形で剣道に関わる紙製品を企画しています!
「紙のプロとしてのこだわり」と「剣道経験者ならではの発想」でアイデアを出し合い、新たな商品企画に挑戦し続けています。

 そうです、シオザワ剣道部から、目が離せませんよ!